コトバ・シグサ・アイ

二宮神山担の思うこと

#LUNGS 感想書きたいだけ書きました

LUNGS @サンケイホールブリーゼ 11/6昼公演 観劇して参りました。感想を含めつつ自分の意見・意志を書き残そうと思います。ネタバレ有。自分のことめちゃくちゃ書いてる。

 

以下、神山くん演じる男を「M」、奥村さん演じる女を「W」と表記します。

 

 

 

 

 


「話し合う」とは

2人の演者が出ずっぱりの100分間2人芝居。セットチェンジや衣装替えも無いため、情景描写は全て2人の言葉と動作によって形成される。「子供を持つべきかどうか」について2人が話し合うというのが話の導入です。子供を持つ事に対する不安や悩みをぶつけるW。若干ヒステリック気味になっているWを宥めるようにMが「落ち着いて、話し合おう、話し合おう」と声をかける。「良い親になれる、大丈夫だから」とひたすら宥め続けるM。

劇中、2人の言葉がぶつかり合い同時に喋るシーンが何度も何度も出てきたのが印象的だった。互いの意見をただただぶつけ合い、ヒステリックになるWに困り果てて苦しそうな泣きそうな顔になるM。果たしてこんな状況は「話し合い」とは呼べるのかな?普段自分が仕事してても自分の意思と相手の意思が噛み合わないことはたくさんある。「対話」とは結局話す側と聞く側になるだけ。互いに理解し合うことの難しさを目の当たりにした気持ちだった。

オセロー*1のときにも「他者の気持ちを理解すること」についてブログ書いてた。100%完全に相手の気持ちは分からないし共感することは不可能だと私は思っている。他人の感情というもの自体怪物のように得体の知れないもので、「相手の立場になって考える」とは言うけれど、正直かなり難しい話だと思う。さらにMとWでは男女で考え方が違うことに加えて、学歴やキャリアが(恐らく育ってきた環境も)大きく違う様子だった。(この辺りは次の項目で詳しく)

子供ひとり産む事によって起きる世界への影響を重く深く考えたり、数十年数100年先の未来よりも自分達の身近な幸せや夢を優先したり、違う方向に枝分かれした2人の意見の中間の良いところを探る行為は、話し合いだけでは終わりが見えない。分かりあうこと自体難しいのだから。

 

 

 

相手と自分の"差"の話。空いた心の拠り所。

あとちょっと記憶違いだったら申し訳ないけれど、いざ出来た子が流れてしまった時、WとMの心の距離がどんどん離れて、Mが君のことがわからない、的なことを言ってたと思うんですよ。Mは落ち込むWのことを心配して寄り添おうとしてたし(後にWから「理解してほしかった」的なことを言われるけど)、すれ違いが生じた場面なんですけど、私は後から考えて、なんとなくMは Wに対して学歴や賢さに関してコンプレックスがあるような気がした。Mは音楽をやってて定職には就いていない様子(後に就職)で、Wは大学院生?研究者?(後に博士号を取る)。途中Mが「(Wの親は)お腹の中の子の父親が僕じゃなければよかったと思ってるだろう」と言う台詞もあり、劣等感のようなものも垣間見える。

Wがアンダーラインを引いた本をMが読むと言っていたし、Wは凄く聡明な人であると同時に、Mは学歴はそんなに良い方じゃなくて割とフラフラしてるタイプだと分かる。そしてMはWの聡明さを尊敬しているしそこに惹かれている感じがした。

なんとなく私はMの立場に近い。Wが細かな数字までスラスラと唱える環境の話や世界の話は勿論関心が無いわけじゃないけど、どうしても難しいと思って遠ざけてしまいがちだ。それに、個人的に学がある人は怖くて苦手だ。学がある人には言葉の力で勝てないと思ってる。奥村さん演じるWは思慮深くて賢くて尚且つ無邪気な可愛さもあるとても魅力的な女性なんだけど、多分リアルにお友達として居たら私は言い負かされてしまう気がする。

Mのその後の女性遍歴についてはただひたすらに「クズ〜!!!」と思ったけど、自分はそこまでには及ばないにしてもやっぱり心の拠り所を探してしまうのは共感できた。自分の話をすると、10年前に嵐のチケット当たらなくなってきたタイミングで関ジャニ∞にハマり出したり、LUNGSの東京10月公演が中止になって絶望した時にひたすらガルプラ*2を追ったり。心を満たしていたものが無くなると、どうしても心の釣り合いが保てなくなるものだと思う。Mの場合は待ちに待った赤ちゃんと愛していたパートナーのWどちらも失ってしまった訳で。「だからって別の女作ってもいいのかよ!!!!ゴラァ!!!!!!!」とは思うけど、同情はしなくもないよね。結局Wのことは傷つけたくなかったのにさらに傷つけてしまったけれど、あの場面での正しい対処の仕方はほとんど無いに等しい気がする。

 

 

 

「良い人間」ってなんだ?

劇中何度も出てくる「良い人間だよね」という台詞。MとWの言う「良い人間」は、なんとなく「思慮深くて賢くて、今の社会や地球の未来について深く考え、問題解決の為に行動を取る人間」を指している感じだった。それの逆バージョンが「後先考えずウェ〜イって子供作っちゃうタイプの人間*3」かな。「僕たちは良い人間だから、きっと良い親になれる」みたいな台詞があったと思う。

個人的に「人間の良し悪し」はずっと気にしてた話題だったから、こうして台詞にピックアップされていると深く考えざるを得ない。どうして個人的に気にしているかざっくり言うと、自分の今いる会社でそんな感じの言葉が頻出しているからです。(あんまり言うと身バレが怖いのでやんわり書きますが)社長が「人間学を学ぼう!!」みたいなやつが好きらしく「良い人間になろう」と良い言葉を並べながらも、要するにただひたすら精神論根性論を語られてるんです。「真面目にひたむきに仕事をしろ、逃げるな、仕事をこつこつ続けろ」といった感じ。勿論間違ったことは一つも言ってないけど、今の会社の方針に対して良く思ってない社員の私からすると、辞めたがる社員を縛り付けているように見えて仕方ない。信頼してついていこう!と思える職場じゃないのにそんな精神論だけ投げつけられてもますます心は離れるわ…と思ってる毎日なのですが。

話を戻して、個人的には人に良いとか悪いとかいう表現はあまり使いたくない。どんな人にも素敵だと思える部分はあるし、ちょっと好かんなという部分もある。これもオセローのとき書いたな…イアーゴーもただ悪い奴じゃないと思うんです。100%の悪人は存在しない、というのが私の勝手なポリシーです。人道的に良くない行いをしてしまうのは勿論ダメだけど(イアーゴーの後半にかけての行いほとんどがそう)、そうさせてしまう理由が大抵の場合ある。そうさせてしまう根本的な原因に対して何か処置をした方が賢明だと個人的には思う。

LUNGSにおける「悪い人間」は「社会のことや地球のことなど、とにかく後先考えず無責任な行為をしてしまう人間」であるとするなら、そうさせてしまう原因は何か。無責任になるしか無かったその人間を取り巻く環境、受けてきた教育や影響を与えた言葉たち かなと思います。そしてそれらに対して改善をしていくのが「思慮深くて賢くて未来のことを考えている人間」。結局は「良い人間」の方に負担が掛かる訳です。優しく聡明な人に冷たい世の中だと改めて思います。健やかに生きるには難しいことを考えなきゃいけないし、問題に向き合わなきゃいけない。これがいわゆる生きづらさに繋がるのかな、と思いました。

 

 

 

「未来に残す」こと

ラストに話は飛ぶけれど、あんな成り行きではあったものの2人の間に出来た子供は幸せに包まれて成長して、最後は(病床にいる)Mを看取るWの「愛してる」で終わる。このラストをみる為に、100分間の口喧嘩を見守っていたような気もします。色んな問題と向き合い、2人の距離が離れた時もあったけれど、行き着く先にあったのは何にも変えられない愛。暗がりから微笑むM、ひとりで光を受けるW。100分間の中のどのシーンよりもしんどさを感じた。(ラブシーンはしんどいというより普通にドキドキしました。愛に飢えてる単純なヲタクでごめんなさい)

正直、LUNGSのラストシーンがどうなるのかなと考えたときに、「100回泣くこと」*4のラストみたいになれば良いなぁと思ってました。ラストシーンが凄く印象的で大好きなんです。「100回泣くこと」は仲睦まじくお付き合いしていたカップルの女性 佳美が卵巣ガンを患い、男性 藤井が闘病生活を支えて懸命に見守る というお話。佳美は息を引き取ってしまい残された藤井は酩酊し毎日泣き続ける生活を送りますが、佳美の遺してくれた意志を引き継ぐ という想いを抱え、また生き続けるというラストです。「100回泣くこと」で残されるのは男性ですが、女性が亡くなって悲しい切ない、で終わらずに遺してくれた意志を受け取ってどう自分が残すか、と未来に繋がるある種の希望が見える終わり方。

対してLUNGSは「子供を持つべきかどうか話し合うカップル」という情報しか入れていなかった為、2人の人生のどこまでを描写するのか観劇前は分かっていなかったけど、子供の有無についての話をどう終わらせるか考えたとき、死が二人を別つときが終着点になると考えました。悲しい終わり方ではあるけれど、最後の台詞に救われた気がした。個人的には理想の終わり方になってて嬉しかった。

きっと最後の最後2人はかなり年老いていると思うけど、そこまで年老いたような動作をしないのも良かったと思う。重ねた年数も大事だけど、紛れもないあの2人があの場で静かに物語を終えることに意味があると思った。

 

 

 


LUNGSを見た私がどうしていくべきか

パートナーはおらず、どちらかというと子供は持たないでいたいと思っている私がLUNGSを見て思ったことは、率直に言えば「パートナー欲しい…」。Wが子供を持つことについて不安だと言うシーンがあります。MがWに対して抱えるコンプレックスをチラッと見せるシーンもあります。自分の弱みを見せても支えてくれる人、話を聞いてくれる人が欲しいと思った。誰かに頼る、甘える、支えてもらうという行為は、私にとっては自分の醜さを晒け出す行為だと思う。女である私がこんなクソッタレな社会で働くためにはとにかく強くありたいと思うし、弱い部分は見せたくない。そういう意地っ張りなところが自分をより生きづらくさせてるのは分かってはいるけど、どうしても鎧は外せない。そんな鎧を解いてくれる人に出会いたい。それは彼氏でもいいし、友達でもいい。そばにいてくれる人なら。

今後私個人の課題としては、弱みを見せても良いなって人を探すことと、先輩や同僚に弱みを見せられるか考えてみることかなぁ。パートナーの居ない私には子供を持つべきかどうか という議題は飛躍し過ぎてるけれど、決して関わりの無い事ではない。子供を持つという選択をした時に、誰もが少しでも生きやすい世の中にしていくのはこの地球で生きている全員の課題だと思う。

この舞台を体験して、今までに無かった新しい視点を見つけるというより、今持っている考えをより深めることが出来た気がする。

 


最後に

素晴らしい作品を作り上げた神山くん、奥村さん、谷さん、その他スタッフ関係者の皆様に御礼を申し上げます。本当に良い体験、良いエンターテイメントを味わわせてくれてありがとうございました。

また、今回は降板となってしまった谷村さんのご回復、今後のご活躍をお祈り致します。谷村さんの演じるWもいつか見たいし、別の形でも神山くんとの共演が見てみたい。今後をますます楽しみにしています。

 

 

今回の舞台で出会えたご縁にも感謝!!

やっぱ現場は最高だよ!!!!!!!

おらぁ!!!!!!!

 

 

 

 

*1:多くの神山担には忘れられないあの9月。2018年 新橋演舞場にて上演された中村芝翫さん主演のシェイクスピア翻訳劇。神山くんはキーマンであるイアーゴー役を熱演

*2:正式名称「Girls Planet 999 少女祭典」。先月までAbemaTVで放送されていた日中韓合同ガールズグループオーディション番組。初めてサバイバル番組を追って感情めちゃくちゃになりました。ちなみにヨンウンペンです。

*3:正直こういう人は身近に結構居て、何考えてんだろとは思う。だけど彼らは彼らなりに起きてしまったことに対して考えていて、一概に否定するのはあまりに残酷な気もする

*4:中村航さん著の恋愛小説。カップルの闘病生活を描く悲しいお話。関ジャニ∞大倉忠義さんと桐谷美玲ちゃんで映画化。初めて一人で見た映画ですが、正直ラストシーンはあまり覚えていない。